この歳まで生きているとは思わなかったとは思わなかったことを思う

昼前、外出。電車に乗って森下へ。開演前ギリギリめに会場に着いたら劇場のまわりが驚くほど閑散としているので、日にちを間違えたんじゃないかと本気で思う。恐る恐る扉を開けてみると係の人がならんでいたのでほっとする。着席。自分の隣の席に座った男の人が舞台を見ながらよく笑う。自分のうしろに座った人も同じようによく笑う。
終幕後、自分以上にギリギリでやって来ていたらしい友達がこちらをみつけて声をかけてきてくれて、アフタートークを並んで座って観たのだけれど、司会役の人の進行が面白くて仕方ない。言葉もさることながらしぐさや目線や表情がなんともいえず失礼で、それが最高に面白い。
終了後、ロビーで見かけた本番中に自分の隣に座っていた人はおそらく同じ学校に通っていた先輩で、その人は自分のことを知らないけれど、こちらはその人のことを知っているといういわゆる知り合いの知り合いの方だったのだれど、考えてみればその人がそこにいることは全然おかしくないというか、むしろ自分がそこにいることよりも自然なことで、芝居を観に出掛けていればいつかはこうして一緒になっただろうに、その可能性について今まで一度も考えていなかったことに改めて気がついた。もちろんその方に話しかけることもなく、またそれを友達に言うこともなくそのまま劇場をあとにして、近くの喫茶店でコーヒーを飲みながら友達と適当なことをお喋りする。
茶店で珈琲を飲みながら、自分と同い年のその友達が「この歳まで生きているとは思わなかった」と言うのを聞いて、そういうことを自分は一度も考えたことがなかったことに気がついたのだけれど、この歳まで生きているとは思わなかったその友達も生きているとは思わなかったことがなかった自分も、結局生きていて一緒に話をしているのだからたいした問題じゃないんじゃないかとそのまま聞き流してしまったのだけれど「生きているとは思わなかった」のと「思わなかったことがなかった」のではあたり前だけれどまるで違うし「ないと思った」ことのディティールやそのときの空気みたいなものは改めて聞いてみたかったとあとから思った。ホットケーキのバターをテーブルにこぼしたりコーヒーをおかわりしたり、あとは適当な悪口などを言いあったりしながらだらだらとお喋り。夕方くらいに店を出て、駅で別れて都営線に乗る。
夜、下北沢にて途中下車して妻と合流。みん亭で担々麺と江戸っ子ラーメンと餃子とライス。満腹。Tシャツに無数の油染み。電車に乗って帰路につく。