ファミレス

エアコンのない僕の部屋は僕にやさしくない。仮に夏とは暑いもので、その暑さが夏を夏たらしめているとしたら、暑さこそ夏で夏の価値は不快指数と発汗量で決まるとしたら、エアコンを使って室温をコントロールして過ごし易くしてしまうのは夏の盛り上がりと逆行することになるので、そういう意味で、僕の部屋は夏にはやさしいと言えないこともないけれど、他人へ向かうやさしさを我がことのように有り難く思えるほど僕は悟れていないので、やはり暑い部屋は嫌い。
なので昨晩は近所のファミリーレストランへ涼みに行った。一緒に行った人は勉強をしていて、僕は本を読んでいて、たまに会話をして、またそれぞれ黙って自分のことに戻ったりして3、4時間過ごした。そういうところに普段から行き慣れていないので、僕はうれしくてふたり分のコップをもってドリンクバーコーナーへ何度も通った。あたたかいのとつめたいのと、どちらも飲んだ。内訳はだいたい半々で、前半つめたいの、後半あたたかいの、というスタイルで飲んだ。
また今度行ってみようとは思うけれども、ひとりで行ったらきっとあまり面白くなさそうな気がする。思うに僕は「二人で一緒に別のことをする」というのが面白いみたいだ。
確かに僕の部屋は夏にやさしく、僕にやさしくないが、それは暑さという面についてのことで、その他だいたいはやさしい。昨日の僕が偉かったのは、嫌と言ってよそへ行ってしまうような相手任せなアピールだけでなく、簾を買ってベランダにかけるという直接行動も実行したということだ。夏ばかりに向けられる僕の部屋の暑さに関するやさしさが、これで少しは僕にも向けられるようになってくれることを願わずにはいられない。