深沢七郎『言わなければよかったのに日記』中公文庫

きちんと読んでもいない「楢山節考」の勝手なイメージで判断していた自分が恥ずかしい。日記の中に出てくる作者は、真面目で純粋ですこしアホな、かわいい大人。その後の人生でいろいろと大変な思いをしたりしたようで、次はそれらの作品を追いかけながら読んでいこうと思う。小説も好きだけど、ここ数年の自分は、こういう随筆や紀行文や日記のような読み物を好んで読んでいる気がする。文章を読むことで、いきいきとしたひとりの人間のイメージが僕の中に見事に立ち上がる。そして好きになる。ぐんと世界がひろがった感じ。「勝手な偏見が世界を狭めている」ということを痛感した今回の読書。
言わなければよかったのに日記 (中公文庫)