続はなうたサーカス「わたしのたからもの」

二階にはちいさいお婆さんが住む

Gallery MADO 西荻窪
はじめて降りる西荻窪は、駅を出て道を曲がるとすぐに住宅街になっていました。そういう街は結構スキです。僕はいつも、目的地までの道のりをくわしく調べたりせず、大体の見当をつけて向かいます。案の定、今回も途中で少し道に迷いましたが、人に尋ねれば教えてくれるので、大変なことにはなりません。そしてこれもいつものことですが、時間通りに目的地には着きません。だいたいは遅刻をします。でも別に、今回も誰かが僕を待っているわけでもないので、大変なことにはなりません。商店街の人に目的地を伝えて道を聞いて、それをたよりに住宅街を歩いていたら、目的地である一軒家のギャラリーを見つける前に、歩く少し先から楽しげな音楽がきこえてきました。なのでその音楽をたどって歩いていったら、なんなく目的地にたどり着きました。演奏会はすでにはじまっていて、リコーダー×3とアコーディオン、ピアニカ、ギターの変則楽団の演奏を、僕は建物の外から聴きました。建物の外、僕の後ろはすぐ住宅街の道路で、演奏会の途中、道路を歩いている近所の人がこの人だかりを気にして覗いて行ったり、チャリンコに乗った小学生が猛ダッシュで目の前の道路を駆け抜けていったり、徐行する自動車が通ったりしていました。トリッキーな演奏をするでもなく、でしゃばった演奏をするでもなく、「じゃあ、次は…」と次々に、淡々と演奏される音楽は、けっしてプロの演奏ではありませんが、だからといってつまらないものなんかではありませんでした。建物に面した道路からきこえてくる住宅街の生活音と混ざり合った素朴な音楽は、その素朴さ故によけいにほほえましくステキに思えました。
演奏会の終了後、会場にはたくさん人がいたので会場を出て、近所の中華料理屋でご飯を食べて時間を潰してから再び戻って、お友だちと少し話をして帰ってきました。ハッキリ言って僕のような男子がそこにいるのは明らかに異質、というかキモい、感じだったと思います。確かにアクセサリーや小物に対してそれほど熱心な僕ではありませんが、住宅街を歩いていて音楽が聞こえてきた時のあの感じはとてもよかったので、たぶん僕は次回ものこのこと出掛けていくと思います。