もういない

「もういないよ」と教えられて、考えてみるとほんとにもういない。いくら考えてももういないし、これからはいないことしかない。ずっと続く不在。スタンダードは「いない」になる。「いない」が当たり前になったらなおさら、前は「いた」ってことが特別に思えてくるだろう。
「いないね」「いないね」「いないけど、前はいたね」「え?」「前は、いたね」「前は?」「うん、前は」「いたの」「いたよ」「ほんとに?」「ほんとに」「いたの?」「いたね」「!!!!!!!!!!!!!!」
というふうに。直に接触したあの感じを忘れちゃあいけないと思った、とは知り合いの言葉。僕はそのチャンスすら失った。