パンの記憶

昨日の花見の帰り道、国道沿いのまつむらパンでパンを買って帰った。失礼な話だと思うけど、その店がまだあることにまず驚き、それがすっかり新しく、しかも広くなっているのにまた驚いた。僕は両親が共働きだったから、小学生の頃の土曜日のお昼は、母親が買ってきてくれるここのパンをよく食べた。僕が食べ終わると母親はまた仕事に戻り、僕は土曜日の地域学習にいつも一緒に行くけんちゃんの家に彼を迎えに行ったのだった。当時一番好きだったのはカレーパンで、次がエクレアパン。コロッケパンやウサギの顔になっているチョコレートパンもよく食べた。考えてみたら15年以上昔の話で、ここのパンを最後に食べたのは10年近く前になるかもしれない。そんなことを考えながらかまったくなにも考えないでか、パンをひとくち食べたら自分でもよくわからないが「あっ」と思った。声は出さなかったけど、文字通り「あっ」という感じで、そのついでになにかを思い出しそうになった。なったけどあまり積極的に思い出そうとしなかったし、なにより食べることに夢中になっていたから結局なにも出てこなかったけど、「あっ」となった体の反応は本当で、それは当時の自分の感覚が脳のどこかか体のどこかに残っていたということなのか、それともそのパンにまつわる背景を元に脳みそがなにか物語を作ろうとしたからに過ぎないのか。いずれにしてもなんとも珍しい感覚で、ちょっと興奮した。パンにまつわる記憶が実際のものなのか脳が作る記憶なのかについては判断しかねるものの、まつむらパンのパンが相変わらずおいしいパンだったことについては迷わず異議なし。