突然のスバラシキ出会いを目撃す

昼頃外出。出会いを求めて小川町・神保町・お茶の水界隈へ。自分も、一緒に行った友達も「今日は出会うのだ」と、出会う気満々、冷静なふりして鼻息は荒い。
ひとまず腹の空腹を満たすため近江屋洋菓子店を探して入る。パンとフルーツジュースとボルシチ。ジュースとボルシチはおかわりもする。最後にケーキも食べる。店内はずっと前から使われていると思われるシンプルな陳列棚やショーケースなど「必要なものだけがある」という感じ。間仕切りもないためお店の高い天井は余計に高く感じられ、ゆったりした店内は余計にゆったりと感じられる。そんな店内で、大きめの椅子に座りながら食事をしつつ高い天井を眺めていると、とにかく贅沢な気分になれて、いい。「豪華」とはまったく逆の贅沢感が、いい。
店を出て、お茶の水界隈で細かい路地を見物したり、大きな大学に潜り込んでみたりしながらてくてく歩くが、肝心の「出会い」はないまま、夕暮れになる。しかたがないので古本屋で横井庄一さんの帰国後第一声ソノシート付きの本などを見つけて買おうか迷ってみたりしてみたものの、どうにも気持ちに納まりがつかず、「新たな出会い」を求めて銀座に向かう。
さすが銀座は大人の街、着いてそうそうに「出会い」はあった。正確には探し求めた出会いではないから「ニアミス」といったほうがいいのもしれないが、確実に近づいているという実感があり、興奮した。勉強にもなった。
夜になり、キラキラしてきた銀座の街をまた少し歩いたところで再びニアミス。しかしこちらはもう慣れたもので、喜びつつも「ニアミスはニアミス」と冷静に受け止めたりする。
しかし「出会い」は突然やって来た。ただし僕にではなく、友達に。
そんな「偶然の出会い」を夢中になって楽しんでいる友達の姿を見ていたら「それこそが『出会い』の醍醐味ではないか」とか、こちらもよくわからなくなってきて、とにかくその出会いを応援したくなる。結局友達はソイツを連れて帰ることにする。こちらも満足する。
その後、以前友達に教えてもらったおいしいドイツ料理屋で夕飯を食べ、「さて帰ろう」という段になったところで友達が「最後にちょっと触ってみる?」と親切にも声をかけてくれるので、好意に甘えて僕も少しソイツを触らせてもらう。「いいね」と言うと友達も「いいね」と言う。結局かわりばんこで触り続け、気がつくと料理を食べ終ってから30分くらいは遊び続けていて、しまいにはまったく見ず知らずのほかのお客さんまで「いいね」と言ってくれたりして、それもよかった。
目の前で友達がソイツと遊ぶのを、目をつぶって聞いてみる。ザワザワした店の雑音の中から聞こえてくる澄んだ音が、とにかくよかった。
結局はじめに求めていたような出会いは僕にはなかったものの、それ以上のよろこびが、今日の出会いにはあった。それでもきっと、本人同士の「よろこび」には遠く及ばないのだろうなと思いつつ、その出会いに立ち合えたことが素直にうれしい。