揚げ餅

揚げ餅

朝比較的早めに起きてしまったのでギターで小さい音を出して遊だりしたあと洗濯、部屋の掃除。満足したので「二度寝でも」というところで部屋のチャイムが鳴るので出てみると宅急便。小さな段ボール箱の中に、大きめの柿が五つと親が家で揚げた餅の入ったビニール袋がひとつ入っている。「柿とおかき」とは洒落のつもりだろうか。それが正しいとしたらそれはそれで驚きなのだけれど、とにかくひさしぶりに実家からの荷物が届く。
餅を小さく切ったものを油で揚げたものに砂糖醤油をかけて甘辛く味つけしたものを実家では「揚げ餅」と呼んでいて、親が作ってくれるそれが好きで子供の頃からよく食べていた。
さっそく届いた「揚げ餅」の袋を開けて食べてみる。いつもよりひとつひとつが大きめで、色もちょうどいいきつね色。甘辛い味付けも若干おさえめで、なんとなく今まで食べてきた揚げ餅よりも洗練された感じ。実家なのに洗練なんて、うまいけど変。
たまに唐突に「好きな食べものは?」などと聞かれると、そんなことをいつも考えていたりはしないから、たいていはうまく答えられなくて困る。でも最近では、そこで僕が真剣に考えはじめて黙うことで、逆に相手が困ってしまわないように、だいたいは「ごはん」か「ハスのきんぴら」か「柿の種」とあらかじめ用意しておいた単語を言うことにしている。もう少し丁寧に回答したほうがいいと思われる相手や場合には「ウナギの蒲焼き」と言うことにしているのだけれど、そうういえばその「好きな食べもの回答セット」に入れるものとして、この「揚げ餅」の存在をこれまでうっかり忘れていたなということに気づいて、今度からはこれもいれようとか、でもこれを入れるなら同じおかきである「柿の種」と交換にしたほうがいいかもしれないとか、でも「柿の種」のほうが有名だから残しておいたほうが無難かもしれないとか、そういうことを考えていたら、いつのまにか袋の中の揚げ餅は最初の半分くらいに減っていた。