三軒茶屋の日曜日

特に目立った面白さはないものの

昼過ぎ、三軒茶屋で曖昧な待ち合わせ。早めに着いたのでキャロットタワーの展望スペースにのぼる。以前、暇な時などは自転車で三軒茶屋まで出かけて来ては、ここにのぼって近くのビルの屋上や、遠くのもやもやした景色を眺めるのがなんとなく気に入っていて、たびたび足を運んだ。かつてそうしていたように今日も下で買ったサンドイッチとコーヒーを持ち込んで昼食。
背もたれのないソファに座ってコーヒーを飲みながら「窓際にベンチなどを置いてくれればいくらでもいられるのに」などと思っていたのだけれど、そうなったらそうなったで自分のような輩がウヨウヨとここにのぼって来てしまって、別の意味で困るかもしれないからやっぱりいいやと思い直す。
展望スペースの大きな窓から見える西の空は、全体的に薄い雲に覆われていて、ずっと前に訪れた中国の石家荘市のガスにまみれた空のように、いろいろなものの輪郭をぼんやりと曖昧にしている。そういえば曖昧、そろそろ時間かもしれないと思い下に降りる。
エレベーターを降りて外に出ると、すぐのところに曖昧フレンドがいた。久しぶりすぎてすっかり顔を忘れてしまっていたのだけれど、見覚えのあるメガネで本当によかった。ひさしぶりの再会の挨拶もそこそこに、シアタートラムにてドラマ・リーディング デニス・ケリー作「ガレキ」。
観劇後、先ほど観てきた舞台以外の話題について活発な意見交換をしつつ、あてもなく住宅街を散歩。面白い物件をいくつか見つける。歩いていたら環7にぶつかり、方向を変えてまた歩いていたらいつのまにか三軒茶屋の商店街に戻っていた。
洋菓子店で買ったソフトクリーム(ミックス)を食べながら、商店街の八百屋や古本屋をひやかし、それから釣り堀へ。今まで何度となくその横を通り過ぎながら、まったく知ることのなかった世界を発見した歓び。静かにひそひそ声で興奮。常連客のやりとりに聞き耳を立て、自分のもの以上に人の竿先に意識を巡らす。
釣果は散々なれど晴れやかな心で店を出て、その後駅前のコロラドでお茶アンドおしゃべり、アンドお手洗い。痴漢のハウツウを教わりつつ、真面目に葬式とハワイアンセンターとわんこ蕎麦を語っていたら、いつのまにか夜もいい時間。再び挨拶もそこそこに、駅で別れて帰路につく。