キンモクセイくさい

庭の金木犀

庭の金木犀が咲き始めていて、家を出るときと帰ってくるとき横を通るといい匂いがする。家から駅までの通り道で小さな川にかかった橋のあたりでも同じ匂いのするところがあり、近所のバス停から家まで歩いて帰る通り道でも同じ匂いのするところがあるのだけれど、その2箇所については匂いの元がどこにあるのかはわからなくて、歩いているとただいい匂いばかりが漂ってくる。
夜、いつもより早めに帰ることが出来たので、昨日買って来た新潮を風呂に持ち込んで、風呂の蓋の上で読みながら一時間くらい入ってみたら、汗がどんどん出て来てスッキリする。風呂から上がると居間の座布団の上で妻が横向きに膝を抱えて丸まりながらスペイン語と思われる知らない言葉をぶつぶつと呟いていて、赤ん坊は隣のベビーベッドの上で静かにスヤスヤと寝ていた。
家に帰ると赤ん坊はこんな感じでだいたい寝ていて、小さい顔のふっくら膨らんだ頬を親指と人差し指で両側から挟んでむぎゅうとやっても全然起きないので、万歳のかたちで顔の横にある赤ん坊の手を持ち上げて、手のひらをひろげながらその小さな手にも確かにあるころころした骨なんかをなぞったりしていると、時々こちらの指をぎゅっと握り返してきたりするのだけれど、それでもやっぱり起きることはないので、次はタオルケットの下にある足を探してその足のやはり小さい指の骨を同じように触ってみたりする。