あけましておめでとうございます

二ヶ月たった。二ヶ月のあいだに、喫茶店の会議室での打ち合わせ中に口をついて出た不本意な言葉が意外にも同席者の記憶に残ってしまったり、お好み焼きを食べた友達が店を出た途端に腹の調子を悪くしてそのままトイレを借りに学習塾に飛び込んでいくのを見送ったり、友達の部屋で酒に酔って少しだけ枕にアレをこぼしてみたり、言わないつもりのことを人に言ってみたり、妻が赤ん坊を呼ぶ呼び名が「チビコ」から「ハムコ」になりさらに「デブコ」になってから再び「チビコ」に戻るのを確認したり、その赤ん坊を友達がふたりで見に来てくれるのを仏頂面で歓迎したり、実家から両親に赤ん坊の羽子板を持ってきてもらったり、ワタリウム美術館の島袋道浩展で思いがけずゴルフをしたあとで屋上でぼんやりしたり、そのまま外苑西通りを六本木まで歩いて行ってタナカツさんのわだはガッポになる展で見たALTOVISIONで気持ちよくなったり、実家に帰ってたくさん寝たり、元旦の朝の車の少ない明治通りをひとりでドライブしたり、ひさしぶりに実家に帰ってきた兄と話をしたり、友達がふたりで家を訪ねてきたり、ミズマアートギャラリーの池田学展と山本竜基展を観に行ってまたいい気持ちになったり、いろいろしていたら師走も正月ももう終わっていて、いつのまにか赤ん坊はおもゆや裏ごししたほうれん草も食べたりするようになっていた。
二ヶ月もあればいろいろ変わる。食べるふりをさせられるがままだった赤ん坊もなんでも自分から口を近づけて食べようとするようになって、その親である自分はこの二ヶ月のあいだで仕事を変えることが決まって、とりあえずあと半月後からはいったん「無職」ということになる。