木曽志真雄(陶)/匙屋さかいあつし(木工)展 宙

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「匙屋さん」を初めて知ったのは数年前の新宿OZONEで、その時は作品を売っていた匙屋の奥さんと少しお話をした。次の年の同じ催しで今度はご本人とお会いして、そのとき1時間くらいまとまった話が出来た。さかいさんはとても丁寧で穏やかな人で、作品の話を聞いたりこちらの話を聞いてもらっているうちに、なぜか人生相談みたいなことになってしまって、僕にとって初対面の人とそういう話になるのは滅多にないことで、自分でも「なんじゃこれ」と思いつつ、なにかを作っている人と話を出来たのが単純にうれしかったのを憶えている。そしてその時ひとつだけ買い求めたちいさな匙を部屋に持ち帰って自分で使ってみたら、舌先から今までにない新しい感覚がしてきて、匙屋の匙が一気に好きになった。
宙について、店内にいたさかいさんに「そういうものです」と話してみると、驚いたことに自分の名前を憶えていてくれて、少し話す。「背が伸びた?」とか言われたりしたのだけれど、僕も僕で「この人こんなに背が高かったっけ」などと思ったりしていた。
今回はお重や小箱などの「おおきいもの」が中心で、目当てにしていたお匙はあまりなかったが、先日会った友達の赤ん坊にあげる匙は運よく置いてあったので、持ってみて一番しっくりくるやつを選ぶ。そして「こういうのがほしいのですが」と、大きめの匙をお願いする。「ほかは早いのに仕事だけは手が遅い」とおっしゃるので「気長に待ちます」と言う。次はいつ会えるのか、いつその大きめの匙が手に入るのか、そういうことはまったくわからないけれど、「それを楽しみに待っている者がいる」ということは多少でも伝えられたと思うので、それはよかった。
店を出て、駅前の商店街で曖昧フレンドのおすすめというカリントウを買いながらお茶をすすり、お気に入りという古本屋でお互い完全無視で本を読みふけったあと、近所のおいしいそば屋に案内してもらい、ビールを飲みながら天ぷらそば(海老をアナゴにチェンジ)をいただく。ごま油で揚げた天ぷらは香ばしくボリュームもあり満腹満足になったところで別れて帰る。
バスで帰る途中思ったのは「安いな」ということで、友達や人の話や会いたい人や買い物や食べものや乗り物や散歩やその他諸々がなかなか詰まっていて楽しかったのに、そんなにお金がかからなかった。実際には多少のお金は出しているんだけれど、気持ちの上では完全に元はとれていて、お釣りがきたし、おみやげもついた。