逢坂卓郎展「GROUND」ポーラ ミュージアム アネックス

http://www.pola-ma.jp/schedule/pop0511_01.html
暗転した小部屋の中で明滅する光は、変換装置によって視覚化された地中からのガンマ線とのこと。なんのことやらさっぱりだけれど「普段は見えないものを別のかたちで今見ている」というのは面白い。
でも面白がるためにはどうしても頭で考えることが必要で、だからなのか、結局一番印象に残ったのは、作品よりも、その作品を展示するためにほぼ完全に暗転されたその部屋の「暗さ」のほうだった。
受付の人に「会場内は暗いので目が慣れるまでに5分くらいはかかります」と言われた時は、別になにも感じなかったのだけど、実際に会場に続く通路に入った途端、目の前がくらくらした。
目を開いていても真っ暗なその通路に入った途端、クモの巣が何重にも重なったようなものや、真ん中に点が打ってある5角か6角くらいの多角形がひたすら続くようなものや、ギューンとパースのかかった方眼紙のようなものなど、実際にはあるはずもないいろいろな模様が浮かんだり消えたり、さらにそれらが白だの赤だの緑だの、いろんな色で発光して見えたりする。闇の中ではそういうものが見えるということを初めて知る。
通路から作品が展示されている部屋に入っても、その部屋に何人の人がいるのか、それぞれがどこにいるのか、そういうことがまったくわからない。音だけが頼り。部屋の大きさもよくわからない。目を思いきり開いてみてもなにも見えない闇の中で、今年の夏にP-HOUSEで見たあの箱のことを思い出してみたりした。
しばらくして、先に入っていった二人組が部屋から出て行くのがわかった。部屋の中にひとりになると、これで誰にもぶつからずにすむと思ってほっとした。そのまましばらく明滅する光とそれ以上にひろがる暗闇を面白がってぼーっと見ていたら、反対側の壁のほうから洋服の擦れる音が聞こえてきて驚く。もうひとりいたらしい。
結局最後までその部屋の暗さに完全に目が慣れることはなく、部屋の出口に向かうために、半歩ずつすり足で進みながら「この暗闇の面白さは、きっとこの不自由さが生む」ということに気づく。
結果的には作品をすっかり無視して、説明不要な単純さで目の前にあった「暗さ」というものを楽しんで帰ってきた。失礼。