チューニング

シキブ(式部:たぶん)

午後、思い出して庭に出る。庭のツバキはまた一段と華やかに花の数を増やして咲いていて、いくつかの花は既に散って地面に落ちている。ツバキの花はひらひらと花びらが散るのでなくてボトリと首から丸ごと落ちるので、あまり縁起がよくないという人もいるけれど、冬に分厚い葉っぱを茂らせてまだ肌寒い色のこの時期にこれだけ鮮やかで大きな花を咲かせるのだから、その生命力みたいなものはずいぶん前向きというか立派なもので、確かにお見舞いなどには向かないだろうけれども、要はこちらが掃除を欠かさずこまめに落ちた花を片付けてあげればいい問題じゃないかと思ったのが少し前のこと。結局しばらく放置してしまっていた地面に落ちたその花を思い出してようやく片付ける。庭の外、いくつかの花は道路に落ちて潰れて茶色く朽ちているので、それも集める。
ついでに草取りをはじめてみると、すぐにぽつぽつと雨が降ってくるので「なんだよ」と思ったのだけれど、たいした雨ではなかったのでそのまましばらく続ける。ベランダに出てきた隣の家のおばあさんとひさしぶりに顔を会わせたので挨拶をする。
しばらく見ないふりをして素通りしていた庭だけれど、こうしてそこに立ってみると、やはりいろいろと考えることや思いつくことや思い出すことがあるというか、そういうムードになってくる。だんだんとチューニングがあってくる。