此岸から思うこと

曼珠沙華ともいうという

午前中、妻とふたりで外出。クリーニングを出してから近所の和菓子屋でお菓子を選んでバスに乗り、駅から電車を乗り継いで埼玉の実家へ向かう。
昼過ぎ、迎えにきてもらって実家着。食卓の用意をしているうちに次々に叔母らがやってくる。挨拶をしてみんなで昼食。寿司とぼた餅と煮物と湯葉と果物と漬け物とお茶。長男である父親以外は女ばかりの5人兄妹に母親と妻が加わってひたすらお喋りをしているのを横で聞きながらひたすら食べる。腹一杯になるまで料理を食べて、腹一杯になった後もまだずっと食べる。お茶をガブガブ飲んだり、つけっぱなしのテレビを叔母らの顔越しに見たり、盛り上がる話に時々口を挟んだりしながら、基本的にはずっと食べている。
夕方、ひと休みしてから留守番をする父親を残して墓場へ向かう。祖父が亡くなる直前、祖父も一緒にみんなでこの墓場に墓参りに来たときに、あまり体調のよくない祖父が境内の低いコンクリート塀に腰を下ろしてじっとしていた時の姿がいまでも忘れられないと叔母の一人が教えてくれた。コンクリートに腰掛けながら真っ白い顔をした祖父の様子があまりにつらそうなので「大丈夫?」と声をかけた叔母に祖父は「大丈夫だ!」と強い声でその気遣いを振り払うようにこたえたという。おそらくその場には小さな子供であった自分もいたはずなのだけれど僕にはその記憶がまるでない。でもたぶん今度また別の機会にここへ来た時にはコンクリート塀に座ってじっとしていたその時の祖父の姿を僕は思い出すというか思い浮かべるというかイメージするんじゃないかと思うのだけれど、それは僕の記憶なのだろうか、なんだろうか。