水深10メートルの風景と50センチでの事故

朝、起床。朝食を済ませてから8時半にホテルに迎えにきてもらって港へ向かう。港から船に乗り込んで出発。桟橋から出て島の西側へまわった船はそこから北上して30分ほどで島の北部の海岸沿いと思われる今日のポイントに到着。ウエットスーツを着せてもらってから海に入りまずはシュノーケルの使い方を教わりしばらく水面をパシャパシャ。ゴーグルごしに見る海の中は思いのほか深くて一番高い水面からいろいろな魚や岩や珊瑚を見下ろしているとふと自分がどこにいるのかわからなくなる。
いったん船に上がったあと妻は船と海に酔ってしまったらしく、今日の朝食を胃袋から逆流させて船のまわりにいる魚にあげている。釣りでも撒き餌はケチるなと言うくらいだから景気がいいなと思いつつ心配そうな顔もする。少し違うれけど「青い海に放つきみのすべてを食べつくす小魚幾万匹」のフレーズを思い出す。
落ち着いてから簡単なサインとボンベの使い方などを教わって、いよいよ海中へ。驚くほど魚が近く、ふと見上げる海面がずいぶん遠い。人の口元から出た空気の泡が海面に向かって上っていく様子がたまげるほどキレイだったりして、目の前に見えるものにいちいち見とれながらスタッフの人に誘導してもらって海中を進む。息を吸い込むと体が浮かんできて、吐き出すとまた沈む。前後左右は慣れているけれど、前後左右のほかに上下がここまで確かにある暮らしは経験がなく、そのうえ見えない潮の流れみたいのもあったりして、体を安定させることすら満足にできないのだけれど、逆にその正しく三次元的な空間がそれだけでもう十分に面白くて、宇宙に行ったらこんな感じだろうかとか思ったりしながら、スタッフの人に案内されながら珊瑚の上を這いずるように散歩する。
昼、船にあがって休憩タイム。妻が再び海に撒き餌をしている横で、出された弁当をもりもり食べる。食べたあとは船の上でみんなで昼寝。お客もスタッフも同じようにそれぞれ好きな場所好きな体勢で居眠りをしている。波の音と風の音と誰かのイビキを聞きながらうつらうつらとして過ごすとても静かな時間帯。
午後、志願してもうひと潜り。前後左右上下のある世界とその風景はとてもキレイで不思議で魅力的で、この風景をしばらくいろいろなところで思い出すのだろうと思いながら帰港。明日も潜ってもいいくらいだと、ふと思う。
夕方、ホテルの部屋に戻ってもまだ明るいので探検がてらプールに行って、ザブンと水に入ったところで眼鏡をかけたままであることに気がついて、慌てて水からあがったところでポケットには携帯電話が入ったままでもあったことに気がつく。液晶の中に水たまりが出来ていて、もちろん電源は入らない。壊したことを妻に告げ、怒られながら部屋に戻って最寄りのauショップをネットで探し、見つけたホテル近くのショッピングモールまで電話を買いに歩いてでかける。