野村誠の“雑曲”プロジェクトその1「P−ブロッ 雑音楽の世界」世田谷美術館

http://www.setagayaartmuseum.or.jp/event/list.html#pe00053
第一部、雑プログラム。一番はじめの「それぞれの植木鉢」という曲、五つの鍵盤ハーモニカの音がひとつひとつだんだんと重なり合いながら、しまいにぐわーっとひとつのうねりみたいになるのを聴いたらゾクッとして、なにかが込み上げてきたので飲み込む。第一部の演奏は概して軽快で聴いていて楽しい。鍵ハモの五重奏のはずなのに、ノリノリになった子供が手や膝を叩いてパーカッションとして参加していたり、部屋の住みっこのほうで遊んでいた子供が曲に合わせてムチャクチャに踊っていたりして、ますます楽しかった。
第二部は雑談+雑曲。会場が結構広くて小さな声での雑談が観客全員に聞こえないため成立しないということで、10分くらいでおしまい。雑談の中から曲が生まれる瞬間というのを見てみたかっただけに残念だったけれど、最後のほうで起こったペットボトルを叩く野村さんと口の前で手を叩いて音を出す子供の掛け合いは面白かった。
第三部はメンバーによる雑音楽。「P−ブロッメンバー紹介」という曲は、メンバー紹介の言葉を音にして出来た曲。言葉から変換された音の連続が聴いている僕の頭の中で再び言葉になる、という遠回りが面白い。ただしその音を頭の中で言葉に再変換できるのは、あるいは再変換できた気になれるのは、僕がその曲のタイトルを知っていて、さらに演者の視線や動作が見えるからであって、もし仮にそれらの情報がなかったとしたら「リズムがバラバラしたワンノートサンバ」みたいな曲くらいにしかわからなかったと思う。「理解」のために音以外の情報が必要で、音以外の要素をともなって成立する曲。この曲の演奏を聞きながら、このあいだ銀座のギャラリーで聞いて憶えていた「モダリティが重なることによってリアリティが増す」という言葉を思いだしたりした。
第四部の犬のための音楽会は、雨で中止。誰もいない芝生の上を少し歩いてから、部屋に帰ることにしてバス停に向かった。